KO神話崩壊…大毅、無念の判定勝ちに「ごめん」

 プロボクシング・Sフライ級6回戦(17日、東京・後楽園ホール、観衆=2500=超満員)まさかの判定決着だ。亀田3兄弟の二男で「浪速乃弁慶」大毅(17)=協栄=が、プロ2戦目でサマート・ツインズジム(26)=タイ=と対戦。デビュー戦の秒殺から一転、防御に徹する相手を倒せず3−0の判定勝利で終わった。KO宣言を実行できず目標の「連続KO勝利日本記録」の夢が断たれ、約束の歌の披露もなし。この悔しさは長男・興毅(19)が5月5日の“世界前哨戦最終章”で晴らす。
 〔写真:KOを狙って決死の形相でラッシュした大毅だが、守りを固めたサマートを倒せず〕

 重苦しい空気に包まれた試合後の赤コーナー控室。感想を求められた大毅の唇は、動かない。30秒、40秒…。60秒間無言を貫くと、たまらず金平桂一郎会長(40)がとってかわった。

 「大毅にとっては、いい経験になったと思う」

 これより30分前、メーンイベント直前の後楽園ホールは、異様な盛り上がりを見せた。2500観衆で超満員にふくれあがった客席の3割を、ギャルが占めた。普段の試合とは全く違う華やかな雰囲気。学校帰りで制服姿の女子高生たちが、あわてて駆け込んでくる。場内が暗転しただけで黄色い歓声が上がる。大毅の入場曲「男一匹ガキ大将」に手拍子がわく。お待ちかね、大毅の登場で「キャーッ!」と歓声のボルテージはMAXに達した。あとは大毅がKOするだけ。しかし…。

 相手のサマートは、開始のゴングから“専守防衛”。左手を大毅の額につけてつっかえ棒代わりにし、浪速乃弁慶の強打を耐え続ける。左右のフックをボディーに叩き込み、何とか倒そうと試みたが、単調な攻めもあって6回終了のゴングを鳴らしてしまった。

 2月26日のプロデビュー戦では、兄・興毅のデビュー戦の記録「1回44秒KO勝ち」を超える1回23秒KO勝利。2戦目も“大ちゃんフック”でのKOを予告したが、衝撃シーンを楽しみにしていたファンのため息を聞いた。リング上のインタビューでは「ほんま、ごめんなさい」と謝罪。予定していた歌の披露もなくなり、明石家さんまから贈られた“黄金マイク”も片付けられた。

 父でトレーナーの史郎さん(40)は、険しい表情を崩さなかった。

 「なんぼ相手がガマンしにきても、倒さなアカン。それがハードパンチャーや。(KO)できんかったからグチャグチャ言われへん。反省点はいっぱいある。こんなとこ(記者会見)に座っとる場合やない」。そう言うと、目をうるませた大毅の左足をポンと叩いた。

 昨春のこと。午前だけだった練習メニューを消化しきれず、興毅と大毅が2部練習を提案。了承した史郎さんは、その日の夕、昼寝で寝坊して練習に遅れた長男と二男をこっぴどく殴りつけ、叱りとばした。“有言不実行”を何よりも嫌うだけに、この日も腹立たしかったのは間違いない。

 大毅の3戦目は18日に発表される。06年は興毅が世界獲りを目指す“亀田イヤー”だ。その兄もプロ4戦目で無念の判定勝ちを経験、リング上で悔し涙を流してさらに強くなり、世界挑戦を射程にとらえた。ボクサーにとっては判定勝ちも薬。兄を気持ちよく頂点に立たせるためにも、二男坊は苦い薬をのみこんで、リベンジを誓う。

勝ったのに負けたような・・・志が高いね!ステキ!!